加藤さんが地域おこし協力隊になったきっかけ
もともと、コロナ禍以前から、いつかは移住してみたいという漠然とした思いがありました。
それまで喫茶店を経営することで、食に関わる仕事をしてきたこともあり、移住するなら農業に関わることができたらいいなと考えていました。
移住先を探す中で、さまざまな地域を訪れましたが、身延町は当初、移住先の候補として訪れた場所ではありませんでした。
下部温泉への旅行が、身延町との最初の出会いでした。中部横断自動車道が開通していたこともあり、思っている以上にアクセスしやすいことがわかり、その後も2〜3度訪れました。
そんな中、目に留まったのが『あけぼの大豆』ののぼり旗でした。「この町には、地域の特産品となる農産物があるんだな」と感じたことを覚えています。
のどかで穏やかな景色が広がり、農業にも取り組めそうな環境に惹かれ、身延町について調べてみると、地域おこし協力隊の募集を見つけました。
そのとき初めて『地域おこし協力隊』という制度を知り、これも何かの縁かもしれないと思ったことが、移住を決意するきっかけとなりました。

着任早々『不作』を経験して
10月に身延町に着任したのですが、例年であれば、これから枝豆のシーズンが本格的に始まる!という時期のはずでした。
ところが、その年は過去にないほどの高温少雨に見舞われ、大豆の株が枯れたり、萎れたりするなど、栽培にとって非常に厳しい状況となっていました。
着任早々目の当たりにした農業の厳しさに、「これから、こんなにも難しい作物を育てていかなければならないのか」と感じたことを、今でも覚えています。
翌年から本格的に栽培を始めましたが、やはり高温や少雨への対応には苦労しました。
それでも試行錯誤を重ねながら、なんとか収穫までたどり着くことができました。
実際に自分で育ててみて、農作物はただ種を蒔いて育てればよいというものではなく、天候や土壌など、さまざまな条件に左右される難しさがあることを痛感しています。
思いどおりにいかないことも多いですが、日々作物と向き合いながら栽培に取り組んでいます。
また、枝豆や大豆をそのまま出荷するだけでなく、あけぼの大豆の魅力をより多くの人に知ってもらうため、加工品の開発にも取り組んできました。
その一つが、あけぼの大豆を使った豆乳ゼリーです。「あけぼの大豆ならではの甘みやおいしさをもっと手軽に楽しんでもらいたい」そんな思いから開発しました。栽培するだけでなく、加工品という形でも大豆の可能性を広げ、その魅力を伝えていく。農業の難しさを実感する日々の中で、育てた作物をどのように生かし、地域の魅力として届けていくかということも、大切な取り組みの一つだなと感じています。

DXP事業を通じた農業の省力化を目指して
栽培の難しさを実感する中で、気候変動が農業に与える影響は、今後ますます大きくなっていくのではないかと感じています。
これまでの栽培方法を続けるだけでなく、変化する環境に対応しながら、農作業の負担を軽減する方法も考えていく必要があります。
そこで、農業の省力化や効率化につなげる取り組みの一つとして、ドローンの活用を検討するようになり、ドローンの資格を取得しました。
現在は、ドローン事業を行う企業や鳥獣被害対策に取り組む企業と連携し、身延町とスマート農業に係るDXP協定を締結して、実証実験を進めています。
ドローンを活用することで、地上からでは把握しにくい圃場全体の状況を上空から俯瞰的に確認でき、作物の生育状況や地形の特徴などを、これまでとは異なる視点から捉えることができます。
例えば、地上からは平坦に見える圃場でも、上空から撮影した画像を分析すると、水口から奥に向かって地面が高くなっており、水が行き渡りにくい場所があることに気づく場合があります。
このような情報を栽培管理に生かすことで、生育不良の原因究明や水管理の改善につなげられる可能性があります。
今後は、こうした技術の活用方法をさらに検討するとともに、鳥獣被害の状況把握や対策にも役立て、農業者の負担軽減と地域農業の持続的な発展に貢献していきたいと考えています。

加藤さんにとってあけぼの大豆とは
大豆は、私たちの食生活を支える大切なたんぱく源の一つです。
その中でも、身延町の特産品である『あけぼの大豆』を、自分の手で育てられることに喜びを感じています。
一方で、近年の気候変動や天候の影響もあり、作物は順調に育つものではないということも感じています。
日々目をかけ、手をかけていても、気温や雨の降り方など、さまざまな条件によって思うように育たないことがあります。
農業には、そうした難しさや思いどおりにならないことが多くありますが、試行錯誤を重ねながら育てた作物が実り、収穫を迎えられたときの喜びは格別です。
自分で育ててみて初めて分かることも多く、農業の奥深さを日々実感しています。あけぼの大豆だけでなく、お米づくりにも取り組みながら、これからも一つひとつ学びを重ね、未熟ながらも農業への理解を深めていきたいと思います。
そして、地域で受け継がれてきたあけぼの大豆の魅力を、自分自身も育てる立場として、これから多くの人に伝えていけたらと考えています。










